2009年12月01日

「零細出版人の遠吠え」から(31)=田悟恒雄

「グーグル騒動」を深読みする

 めでたさも中ぐらい
 全世界を巻き込んでこの間すったもんだを続けた「Google ブック検索問題」。この11月に、米連邦地裁の「和解修正案」が出ました。
 結局、今回の和解は、米国ほか英・加・豪の英語圏4カ国のみに限定され、日本も対象から除外されることになりました。その点では、日本の流対協などの主張が容れられたわけで、歓迎できます。
 ただし、その「めでたさもまだまだ中ぐらい」で、諸手を挙げてというわけにはまいりません。これまでに無断でスキャニングされた日本の書籍などをどうするのかが不明だからです。これら違法な手段で集積したデータをデータベースから全面削除して初めて、「和解修正」の誠意が認められることになるのではないでしょうか?

 四面楚歌
 今回の「和解修正案」でも、Google 社が「孤児作品」(権利者不明作品)を販売できる点は変わりませんが、その収益の扱い(山分けの仕方)については具体的に規定しています。
 しかし、Amazon、Internet Archive、Microsoft、Yahoo など反 Google の「Open Book Alliance」(OBA)は、これを「小手先のまやかしに過ぎない」と批判しています。
 著作者や出版社に何の相談もせず、750万点からの大量の書籍を片っ端からスキャニングするという前代未聞の乱暴狼藉を働いて「四面楚歌」に陥ったGoogle は、今回の「和解修正」について、次のようにコメントしています。

 「今回の修正により、和解を通じてできるだけ多くの国の書籍を利用できるようにすることがかなわなくなり、残念だ。しかし、世界中のすべての書籍をネットで利用可能にするという使命達成に向けて、各国の権利保持者と引き続き協力していきたい」

 「孤児本」
 それにしても「orphan books」(孤児本)とは、よく言ったものです。ろくに調べもしなかったのでしょう、よほど古い本ならいざ知らず、「れっきとした零細出版社」がいまも書店で売っている本までも「孤児」にして、勝手にスキャニングしてしまう。そんな乱暴狼藉がまかり通っていいはずがありません。
 そりゃあ零細版元なんて、いつだって、やっているのかやっていないのかわからない存在だ、というところまでは認めましょう。だからって、著者名も出版社名も明記してある本を、Google が勝手に「orphan books」だなんて認定してしまっていいわけがない。
 検索業者 Google が知らないだけなんだから、せめて「stranger books」くらいにしておけば、零細出版人がそんなにいきり立つこともなかったのかもしれません。
 そういえば、日本でもそんな詐欺事件がありました。他人の不動産の登記簿を勝手に改ざんして自分のものにしてしまったなんてのが、ね。

 出版界は大資本の草刈り場
 で、このたびの「Google ブック検索騒動」のなか、出版社の「sustainable development」の鍵となる重大問題が、にわかに浮上してきました。「電子書籍」というやつです。
 いまのところはまだ、構想とか目論見とかの段階ではありますが、これを機に急展開するであろうことは明白です。現に、出版をめぐるこのところの大手印刷資本の動きなど、この延長線上に位置づけてみると、ぴったりとつじつまが合うのです。つまり、出版界はいまや、「コンテンツをめぐる資本の草刈り場」と化している、と思えるのです。
 考えてもみれば確かに、印刷会社は出版のコンテンツをデータのかたちで集積しています。それは年々、膨大な量になるでしょう。これを「活用」しない手はないと考えるのは、資本の常道です。かくして最近では、大手印刷会社の営業マンが小零細版元のドアまでノックする、といった具合です。いや、こりゃまだ、リベルタ子の勘ぐりでしかありませんがね。

 そーれ、お出ましです。
 もちろん、「ケータイ小説」や雑誌、コミックなど、すでに「電子出版」といわれるものはあるのですが、ここでいう「電子書籍」とは、さしあたっては図書館蔵書の電子化の問題です。
 11月初め、国立国会図書館、日本書籍出版協会(書協)、日本文芸家協会の3者が、国会図書館蔵書のデジタル化とその有料配信システムづくりのため、「日本書籍検索制度提言協議会」を立ち上げることを発表しました。
 また、大学図書館でも、同様のプロジェクトが進んでいて、早いところではすでに「WEB図書館利用における利用許諾及びデジタル蔵書化のお願い」の文書を、出版社に送付しています。そーれ、お出ましです。その実務の代行をしているのが、「丸善(株)、大日本印刷(株)、iNEO(株)」のDNPグループであるということは気になるところです(っていうことはもちろん、凸版印刷=紀伊國屋書店連合も同じことを考えているに違いありません)。
 「電子書籍」が実現すれば確かに、「本を探す時間も短縮でき、原本である書籍を傷めることもない」(国会図書館・長尾真館長)。けれども、デジタル化の範囲や時期、使用料の配分の仕方などをどうするかによっては、ただでさえ苦境に陥っている出版界にとって、大打撃となりかねません。
 出版社はどこも、定価の半額での国会図書館への納本を義務づけられているのですが、それが「デジタル化のための原本」となる日は、刻々と近づいているようです。

 リベルタ出版HP http://www.liberta-s.com より


posted by ろばの耳 at 14:41 | TrackBack(0) | 「零細出版人の遠吠え」から | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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